ヘッジ・ファンドが巨額の利益を得る
1990年代後半といえば、日本ではバブル崩壊で不況が続いていた時期ですが、この同時期に、東南アジア諸国(香港、シンガポール、タイなど)では、空前の好景気に沸いていました。
これらの国々では、株価や不動産が急騰し、欧米など海外からの投資資金がなだれをうって流入していたのです。
しかし、ここに矛盾を感じ取っていたジョージ・ソロスなどのヘッジ・ファンドは、1997年になると、まず、タイの通貨であるバーツに売りを仕掛け、切り下げに追い込んでいきました。
このヘッジ・ファンドの「アタック」の対象になったのは、マレーシア・ドル、インドネシア・ルピアなどで、これがほとんどのアジア通貨に広がり、いずれも急落しました。
こうした混乱により、ヘッジ・ファンドは巨額の利益を得ました。
ロシア危機によりヘッジ・ファンドが巨額の損失を出す
翌年1998年になると、アジアからはじまった通貨危機は、ブラジルやメキシコ、ロシアなど、その他の地域にも影響を与え始めたことから様相が一変します。
特に、深刻な財政危機に陥っていたロシアは、この影響で国債の元利払を停止せざるを得なくなり、これに投資していた欧米の投資家は莫大な被害を受けました。当然、ヘッジ・ファンドもこれに巻き込まれ、巨額の損失を出したのです。
さらにロシア危機は、アメリカ国内の債券市場にも影響を及ぼしたことから、それが原因となり、1998年9月、有力ヘッジファンドのLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)が破綻しました。
為替市場もその影響から大混乱に陥り、当時135円前後であった米ドル/円は、わずか3日で20円以上もの大暴落となり、有力ヘッジ・ファンドの破綻も相次ぎました。
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